オススメアメコミ紹介第17回:デッドプールの兵法入門
今回は本来「デッドプール:スーサイドキングス」の紹介をするつもりだったが、予定を少し繰り上げて今月出たばかりの本「デッドプールの兵法入門」を紹介していこう。
なぜ予定を変更したかというと、この本が非常に面白かったからだ。
大まかなストーリー
かつて、中国には孫武という兵法家が居たというのは、皆さんご存知だと思う。
一応説明しておくと、今もなお研究され続けている兵法書、「孫子」の作者である。
「これを翻訳して世の中に出せばベストセラーになる!」
孫子を元にしたライバルの蹴落とし方やビジネス論など様々なアイデアを考えるデッドプールだったが、それらはすでに誰かがやっていた。
今の世の中、シャア・アズナブルから学ぶ逆境の克服方法まで出版されているご時世だ。
孫子なんてすでに多くの人が独自の解釈を加えたり、ビジネス論に応用している。
そんなわけで、出版社に鼻で笑われる。
「ただの翻訳ではなく、孫子を元にしたハウツー本なら内容次第で出版出来るかも」
という提案を受け、デッドプールが思いついたのが、「孫子から学ぶ戦争での生き残り方」だった。
しかし、今のアメリカは(宇宙人が攻めてきたり地球そのものが危機に陥ることもあるが)平和そのもので、発想はユニークだが需要がない。
そんなわけで出版しても売れないだろう。
そう考えたデッドプールは戦争を勃発させることを決意する。
そんなわけで、デッドプールはロキの元へ行き、アスガルドの連中を地球に侵攻させるように企む。
ソーを悲しませるためだけに地球侵略を目論むロキ。
果たして、デッドプールの本は無事出版されるのか?
というのが大まかなストーリーだ。
孫子の脅威的な有効性
本作は、デッドプールがロキをけしかけ、孫子を元にアスガルドや地球に対して戦争をしかけるといったお話だ。
そんなわけで、物語の随所に孫子の引用文が出てくる。
現代でも通用する孫子の効果は恐ろしいもので、なんとあっさりロキはソーをやアスガルドの戦士たちを撃退する。
そして、最終的にロキはアスガルドの支配者となり、ソーに完全勝利することになる。
満面の笑みを浮かべて高笑いするロキ
恐るべき孫子。
そして、いよいよ地球に向けて進行するロキとデッドプールだが、このままでは終わらない。
前述したが、この物語は、孫子の言葉が引用されている。
孫子には勝つための方法が書かれているだけではなく、やってはいけないこともきちんと書かれており、それらもちゃんと引用されている。
つまりどういうわけかというと、それはコミックを買って直接確かめてほしい。
余談だが、今回の冒頭の孫武の逸話は孫武の中でも特に有名なエピソードとして知られている。
横山光輝先生作の「史記」にもこのエピソードは書かれているので興味のある方はぜひ読んでみよう。
感想
実に面白い。
「少しボリュームが少し足りないかな」なんて思うかもしれないが、うまくまとまっており、エピソードも非常に秀逸だ。
登場人物もロキやデッドプールの他にもアベンジャーズの面々やレッドスカルなど有名所のヒーロー・ヴィランも大勢登場し、キャストが非常に豪華だ。
特にロキの悪役っぷりが実に良い。
映画やアニメで見た「すごい事やらかしてるのに一つのヘマで一気に転がり落ちる」といったロキがこの本には存在している。
デッドプールだけではなく、ロキも好きなら是非読んでみよう。
また、「ボリュームが少し足りないかな」といったが、お値段は1500円とアメコミの中では安い部類に入るし、比較的お求めやすいお値段になっているのもポイントだ。
コメディが好きなら非常におすすめできる一冊だ。
ぜひお試しあれ。