オススメアメコミ紹介番外編:タンタンの冒険
今回は番外編、バンドデシネ(フランスの漫画のこと)を一冊紹介だ。
過去記事「発行部数10億部!?漫画界史上最も売れた漫画トップ5 」でも紹介した漫画「タンタンの冒険」についてお話しよう。
過去記事で「一万文字以上の感想文や思い入れを書きたいほど好きな漫画だ」と語っているが、さすがに1万文字も書いたら誰も読む気がしないだろうし、そもそも読んだことのない人にとっては興味も持ちづらいだろう。
というわけで3分の1程度にとどめておく。
タンタンの冒険とは
タンタンの冒険とは、ベルギーの漫画家「エルジェ」氏作のバンドデシネだ。
ストーリーは、少年記者の「タンタン」が愛犬の「スノーウィ」とともに、世界中の様々な事件に巻き込まれたり、自分から首を突っ込んでいき、事件を解決していくというお話だ。
作品の感想だが、文句なしに面白い。
児童文学コーナーに置かれていることが多い本作だが、この作品は大人が読んでも充分にハラハラ・ドキドキさせてくれる。
というのも、ストーリーが若干大人向けだからだ。
なんせデビュー作でソ連の内情を取材に行くというエピソードで始まり、政治関連のお話がわんさと出てくるからだ。
また、のほほんとした冒険ものかとおもいきや、そんなことはない。
ソ連の内情調査の取材に赴き、チェキスト(秘密警察)に秘密裏に始末されそうになるのを皮切りに、犯罪組織の殺し屋に命を狙われたり、ゴリラに襲われたり、ヒマラヤ山脈や海や砂漠で遭難したり、原住民に処刑されそうになったりと、10代の少年にしてはハード過ぎる人生を送っている。
物語冒頭からこれである。
しかし、それでも持ち前の聡明さや幸運、そして仲間の力でタンタンは幾度も危機を乗り越え、事件を解決している。
また、ところどころ禁酒法だの柳条湖事件だの子供には少し難しい話が絡む事もあるが、基本的にストーリーは単純明快な冒険ものが多く、大人も子供も楽しく読むことが出来るのがポイントだ。
子供時代に読んで無邪気に楽しみ、大人になって読み返すと、結構ハードだったんだなと分かるのが魅力だね。
なお、作中で少し差別的な表現があるエピソードがあるが、描かれた時代が時代なのであまり気にしないでおこう。
当時はまだ今のような考え方とはちょっと違った時代なのだ。
この漫画の面白いところは、世界中が冒険の舞台であるということだ。
ソ連やアメリカ、チベット、アルメニア等、時には架空国家まで旅し、挙句の果てにはなんと月まで旅をする。
昔に、今は亡き父が読ませてくれたタンタンの原書はロケットのカタログや内部構造が紹介されていて、字がわからなくても凄いワクワクさせてくれた。
紅白の市松模様のカラーリングが素晴らしい。未だにロケットといえばこのデザインを連想する。
今ならNASAはかろうじて分かる。今でもそれ以外は読めない。しかしそれでも子供の頃はワクワクして読みふけったものだ。
当時幼稚園の頃の僕を非常にワクワクさせてくれた写真だ。ライトで少し見づらいと思うがかんべんして欲しい。撮り直す気はない。
タンタンの正義の心と冒険心、そしてタンタンが旅する様々な世界は、大人も子供もワクワクしながら読めること間違い無しだ。
子供に読ませるついでに、ぜひご自身も読んでみてください。
めくるめく冒険の世界があなたを待っているから。
愉快な仲間たち
タンタンの相棒はスノーウィだが、他にも、友人は多い。
まず、「ハドック船長」だ。
飲んだくれの船乗りであり、自分の所持している船を乗っ取られていると知らずに船長室で飲んだくれていたが、タンタンと出会い、行動を共にすることとなり、タンタンの親友となる。
で、そんなハドック船長だが、頼れたり足を引っ張ったりと、実に極端だ。
特に初登場回の船長はとことんタンタンの足を引っ張り、何度もピンチに陥らせてしまっており、若干ウザキャラだった。
しかし、悪人ではなく気のいい人であり、情に篤い好漢だ。
また、ハドック船長の特徴として、罵詈雑言がある。
ハドック船長は口が悪く、よく悪態をつく。
「コンコンニャローのバーロー岬」「なんとナントの難破船」を始めとし、様々な悪態を吐く。
見習いたいこの罵詈雑言のセンスよ。
これらの罵詈雑言は全て翻訳者の川口恵子氏による翻訳であり、実際にはもっと別のことを言っているそうな。
氏のセンスの光る翻訳はタンタンの面白さをさらに引き立たせており、クスッと笑える訳が多い。
ちなみに、バーロー岬(バローミサキ)もナントも、実在する地名である。
次に、よく登場するのが「デュボンとデュポン」の二人だ。
ヒゲのボリュームでしか違いがわからないほどのそっくりさんだが、二人には何の血のつながりもない全くの赤の他人である。
この二人の特徴は、一言で言えばマヌケだ。
よく転び、よく物にぶつかり、よく騙される。
変装はバレバレの変装しか出来ず、うっかりと機密事項をペラペラしゃべり、そして何度も誤解でタンタンを逮捕しようとする。
そんな二人は、インターポールの刑事だ。
つまり、わりかしエリートだということだが、この体たらくだ。
ほぼヘマしかしでかさない二人だが、タンタンの冒険における名コメディリリーフであり、タンタンを語る上では無くてはならないコンビといえる。
なお、アニメ版でこの二人の声優だった故・永井一郎氏は、サザエさんにおいても波平、海平と、見た目がそっくりな登場人物の声をあてていた。
そして、「ビーカー教授」だ。
ビーカー教授は、天才科学者であり、潜水艦やロケットを開発し、幾度と無くタンタンたちの助けになってきた人物だ。
しかし、役どころはコメディリリーフである。
教授は耳が悪いのに補聴器を付けないので、会話がろくに成立しないという人物だ。
なお、現在手持ちの本では登場しているエピソードがないので画像はない。
図書館なり本屋さんで探して確かめて欲しい。
ちなみに、ビーカー教授には実在のモデルが居る。
ジャック・ピカールという学者さんがモデルだ。
ピカール氏は、人類初の気球の飛行による成層圏到達を成し遂げている。
オススメエピソード
ここでは、個人的におすすめなエピソードを紹介していくぞ。
ちなみに、タンタンの冒険の翻訳版は実際に刊行されたエピソードの順番とは違う。
よって、時系列が少しバラバラになっている。
なお、タンタンの冒険日本版公式ホームページにて最初の数ページサンプルを読むことができるので、興味のある方は是非どうぞ。
金のはさみのカニ
ハドック船長が初登場するエピソードだ。
なんやかんやあって怪しい船を調査したら麻薬を密売している船であり、大立ち回りの末にハドック船長と知り合い、飛行機で脱出するも遭難してしまうというエピソード。
籠城の際に酒の匂いで酔っ払い、歌を歌いながら敵に捕まるタンタンが非常に印象的だった。タララララウッティ。
このエピソードのハドック船長はとにかくウザキャラだった。
タンタン、ソビエトへ
記念すべきタンタンデビュー作。
翻訳版が出たのは2003年と、微妙に最近。10年以上前を最近というのは甚だ疑問だが。
作者であるエルジェ氏はこのエピソードを描いたことを後悔しているらしいが、それでもなかなか面白く、個人的には気に入っている。
翻訳作品では、このエピソードのみ白黒であり、タンタンも今のタンタンとはだいぶ違う。デフォルメされているというべきなのだろうか。
連載当時は1929年。スターリン政権だ。
まだ第二次世界大戦も始まっていない頃であり、何かとプロパガンダがドーのコーのとアレコレな時代だったので政治的なお話も出てくるぞ。
目指すは月~月世界探検
初めて見たタンタンがこれだ。非常に思い入れが強い。
子供の頃は「いつか僕も月へ行くんだ」などと思っていたが、今となってはむしろ憧れより恐怖のほうが強くなってしまった。
大人になるって悲しいね。
実は手元にこの本無いんだ。最後に読んだのなんて20年以上前だし。
でも読めば多分思い出せると思う。
アニメもオススメ
子供に見せる場合、アニメもオススメだ。
アニメのほうがもう少し子供向けだし、なかなか面白かったのを覚えている。
吹き替えでタンタンを演じているのは、ドラゴンボールでトランクスを演じていた「草尾毅」氏、ハドック船長を演じているのは北斗の拳のラオウや、俺がハマーだ!のトランク所長の吹き替えをしていた「内海賢二」氏、そして上でも紹介したが、デュボンとデュポンと演じているのは、サザエさんの波平を演じていた「永井一郎」氏である。
また、映画化もしている。
2011年にはスティーブン・スピルバーグ氏が監督で3Dアニメ映画になっている。
個人的には昔のアニメのほうが好きだがそれでもなかなか面白いぞ。