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お勧めアメコミ紹介第21回:アメリカン・スプレンダー

漫画のジャンルの一つに「日常系」と言われるものがある。

有名なところではあずまんが大王とからき☆すたとかが当てはまるのかな。

つまり、バトルも未来から来たロボットとか異世界の血沸き肉踊るような冒険活劇とかが一切ない、普通に出掛けて生活をおくるだけのジャンルのことだ。

日本では基本そういった日常マンガは女子高生や女子中学生が主役だが、今回紹介する日常系漫画の主役はおっさんだ。

というわけで紹介しよう。アメリカン・スプレンダーだ。

なお、今回の本は地元の図書館で発見し、借りたものだ。

そのため、図書館名とバーコード部分は塗りつぶしているのであしからず。

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大まかなあらすじ

アメリカン・スプレンダーは、作者であるハービー・ピーカーの日常を綴った物語だ。

以上。

 

本当にこれだけなんだよ。

そこにはヒーローもヴィランも存在しない。

作者のハービー・ピーカー氏の日常が描かれている。

例えば冒頭では自分と同じ名前の人間を電話帳で発見したエピソードから始まったとおもいきや、次のエピソードは離婚したのち、本作を書き始めるお話になったりする。

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なお、本作もアメコミの例に漏れず様々な人が絵を書いているが、中でもロバート・クラム氏ははこの作品において多大な貢献をしている。

と、名前を言っても殆どの人が殆どの人が知らないだろうから簡単に説明すると、アンダーグラウンド・コミックス(自費出版及び小規模出版社から刊行された漫画のこと)界の巨匠と言われており、現在も活躍している漫画家である。

昔の洋楽とかが好きな人ならば、CDのジャケットとかでこの人の絵を見たことがあるかもしれない。

本作の表紙のような泥臭いというかなんというか、個性的で力強いタッチの絵がすごく特徴的なので見たことあるかもと思った人もいると思う。

 

閑話休題

この本は、作中のエピソードでも描かれているように、ハービー・ピーカー氏が当時(1970年代)のアメコミの新ジャンルを開拓しようと試行錯誤した末、日常の話を漫画にしようと思いつき、それを友人であったクラム氏に相談し、イラストを依頼したことで誕生した。

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今でこそ日本では様々な美少女が4コマであれこれやってる日常マンガだが、当時ではこういったジャンルは斬新であり、一部でカルト的な人気を巻き起こしたそうだ。

あくまで個人的意見だが大人気ではなくカルト人気なのは、やはりなんだかんだ言ってもアンダーグラウンド・コミックだったからなのではないだろうか。

日本に例えるなら同人誌やらあまり聞いたことのない出版社からでているようなものであり、ネットもない時代だったのでよっぽどディープな世界だったのではないだろうか。

まあ当時のことあまり詳しくないからおもいっきり的はずれな意見かもしれないけど。

 

ただひたすら描かれる日常

この作品は、とにかく日常が描かれている。

コミックが売れなくて悩んでいるお話。

靴を買うお話。

離婚したお話、

再婚したお話。

とにかく様々だ。

そして、何より特筆すべきは「セリフ量の多さ」だ。

イヤもうマジで今まで読んだアメコミの中ではぶっちぎりにセリフ量が多かったぞ。

↓にその一部を紹介しよう。

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流石に普段のサイズだとただの黒いごちゃごちゃにしか見えなかったからサイズを大きくしたが、ほんともうこのエピソードは4ページほどしか無いのに読むのにえらい時間がかかった。

もし英語版を渡されて「翻訳しろ」なんて言われたらふざけんなって言いたくなるくらいだろうな。

もちろん全エピソードがこんな文字量ではないが、それでもかなり多い。

しかし、それでもげんなりすることなく読めたのは、なかなか面白いからだ。

そう、ただの日常マンガなのにこの作品は面白いのだ。

しかし、スリルもサスペンスもない単なる日常モノなので、そういったものを期待しているならこの本はお薦めできない。

 

感想

よつばや隣りに住む綾瀬家はおろか、やんだすらでてこないよつばと!のような作品。

といったところか。

めちゃくちゃけなしているように思えるかもしれないが、もちろんそんなつもりは毛頭ない。

よつばと!の世界には可愛い女の子がいる。よつばが起こすハプニングや日常がある。

しかし、そんなものはこの作品には存在しない。

そこにあるのは作者であるハービー・ピーカー氏の本当に他愛もない日常だ。

何もすること無いから寝て、気が付いたら翌朝になってて、いろいろ落ち込んだからマスかいてすっきりしたりと、おしゃれな要素が一切ない。

日本よ、これが日常系だと言わんばかりの日常モノである。

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しかし、それでもこの作品のタイトルはアメリカン・スプレンダー」なのだ。

スプレンダーとは、輝きとか、華麗だとか、堂々としたという意味である。

はたから見たら冴えない人生に見えるかもしれないが、それでも、ハービー・ピーカー氏の少しだけ波乱が起きることもごくたまにある日常や、様々な思い出、出会い、別れがあり、それが一冊の本になったのだ。

そして、満足した人生を送っているハービー氏はとてもスプレンダーな人生を送っているのではないだろうか。

…最後なんかいいこと言おうとして壮絶にスベった気がする。

 

なお、この作品はなんと映画化もしている。

吹き替え版もでているらしいが、2015年11月現在まだ見てないので何もコメントは出来ない。