アメコミキャラクター紹介第23回:ミニッツメン
なんか凄く久々のキャラクター紹介だ。
今回はキャラではなく、ヒーローチームを紹介するぞ。
「ミニッツメン」だ。
ミニッツメンは、アメコミの傑作「ウォッチメン」に登場するヒーローチームであり、物語の重要な要素となっている。
なお、ミニッツメンとは、民兵(ミニットマン)の集まりという意味である。
人数分紹介した結果、今回は話と文字数がわりかし長いぞ。
チーム結成から解散までの経緯
ミニッツメンとは、1930年代ころ結成されたヒーローチームだ。
1930年台は、スーパーマンの連載が始まり、まだスーパーヒーローが漫画の世界の中だけの存在だった時代である。
そんな時代に、ヒーローチームが結成されることになったきっかけは、一人の男による大捕り物から始まった。
ある日、フードを被った正体不明の男が強盗を撃退し、名も名乗らずに去っていった。
マスコミは彼を「フーデッドジャスティス」と名づけ、報道した。
フーデッドジャスティスの登場により、後に続くかのように、様々なヒーローが誕生した。
元警察官であり、左フックが必殺技の正義漢「ナイトオウル」
元フットボールの花形選手で後に銀行のお抱えヒーローとなる「ダラー・ビル」
元米軍海兵隊で、チーム結成の発起人である「キャプテン・メトロポリス」
チャイルドポルノの摘発のためヒーロー活動をしていたヒロイン「シルエット」
ミニッツメンのセックスシンボルでもあり、大人気を博した「シルクスペクター」
大型拳銃を使い、短距離の滑空も可能なプレイボーイなヒーロー「モスマン」
そして、暴れたいという欲求の元ヒーローとなった危険人物「コメディアン」
彼らヒーローは、一人一人で行動するよりも、組織的に活動することでさらなる効率化が可能になるというキャプテン・メトロポリスの提案により、1つのチームとして活動することになった。
これが、ヒーローチーム「ミニッツメン」の結成の経緯である。
ダサいとか言うな。
ミニッツメンはアメリカにはびこる悪と戦い、一躍時の人となった。
しかし、その後、戦死したり、様々な原因で引退したりと、一人一人いなくなり、やがて、結成から10年後に解散した。
そして、その役目は次世代のヒーローチーム「クライムバスターズ」が引き継ぐことになる。
メンバー紹介
最初にほんの少しだけ紹介したが、改めてメンバーをもう少しだけ詳しく紹介しよう。
ついでに末路も。
ナイトオウル(画像真ん中の人)
ナイトオウルは、本名を「ホリス・メイソン」という。
ヒーローに強いあこがれを持つ元警察官であり、フーデッドジャスティスの活躍に触発され、ヒーローになった。
ヒーローネームの由来は、在職中ヒーローになるためのトレーニングをするため、同僚に飲みに誘われても断りまくっていた結果、ナイトオウル(フクロウ)とあだ名されたのが発端だ。
また、ファントムという犬を相棒にしており、共に悪を必殺の左フックでノックアウトし続けてきた。
性格も常識人で良識ある人だが、いい大人がヒーローになりたいと思い、実際にヒーローになる辺り少し常識からほんの少し足を踏み外しているのかもしれない。
そして、悪がより複雑に、小ずるくなり、左フックで解決しなくなってしまったと感じ、引退を決意。
その後は自動車の修理工を営む傍ら、自分の後継者である「ナイトオウル二世」とたまに昔話をするのが楽しみな人になった。
そして、そんな寂しい老人になったナイトオウルの最期は、非常に悲しく、切ないものとなった。
なお、映画の日本公開版ではカットされているが、検索すればそのシーンは簡単に見つかる。
このシーンは漫画を読んでから見ると非常に物悲しく、生々しいぞ。
見なければよかったと凄く後悔した。
コメディアン(画像でしゃがんでいる人)
コメディアンは、本名を「エドワード・ブレイク」という。
暴れたいからとヒーローになった彼は、その念願かなってやりたい放題やらかす。
その暴れっぷりは仲間にも及び、シルクスペクターを未遂で終わったがボコボコにぶん殴った挙句レイプしようとしたりした。
ミニッツメン解散後もクライムバスターのメンバーの一人として活躍し、暴徒と化した市民を男女差別せず容赦なくぶっ飛ばしていた。
その後もベトナム戦争に従軍し、孕ました女性を射殺したり映画では笑いながらベトナム兵を火炎放射で焼き殺したりケネディ大統領を暗殺したりとやりたい放題だ。
まさに外道と言わんばかりの彼だが、そんな彼の末路は、政府の名で秘密裏に活動中、見てはならないものを見た結果、何者かに暗殺されるという末路だった。
一見胸糞悪くなるような外道だが、彼の心境を知ると、非常に魅力のある人間に見える。
また、この物語の超重要人物であり、コメディアンのレイプ未遂があったから最終的に物語は(表面的には)丸く収まり、そして、彼の死が物語の始まりを告げることとなる。
フーデッド・ジャスティス(右端の人)
フーデッド・ジャスティスは、世界ではじめてのヒーローであり、正体は結局誰にもわからないままヒーローを引退した。
シルクスペクターとも恋愛関係にあったが、実はこれはカモフラージュだ。
彼は実はゲイで、しかもサディストだ。
チームのとある男性と恋愛関係にあり、映画ではそれを匂わすシーンがほんの数秒ある。
そんな彼は、ある日突然現れたのと同じく、ある日突然消えた。
時は50年代。アメリカのアカ狩りにより、ヒーローは厳しく追求された。
特にマスクをかぶったヒーローは正体を公表しなくてはならなくなった。
そんな中、フーデッド・ジャスティスはこの招聘に応じず、皆の前から姿を消した。
その後、正体と思しき人物がコメディアンにより暗殺された。
ドイツ系移民で、「ロルフ・ミュラー」という偽名を使っており、とうとう本名は分からずじまいだった。
シルクスペクター
本名は「サリー・ジュピター」という。
浮かしは爆薬を使っていたが、それが元で手をやけどして以来は、素手で戦っている肉体派なヒロインである。
彼女は、ミニッツメンの中でも人気があり、女優に負けず劣らずなセックスシンボルとして活躍していた。
具体的に言うと、彼女が主役のエロ同人をファンが送り付けてくるくらい。
それを後生大事に保管してるどころか、人目につくところにおいている彼女も彼女だが。
産まれた娘は「二代目シルクスペクター」として活動することになるのだが、彼女の出生が、物語に大きな影響をあたえることになる。
作中、ミニッツメン唯一の生存者であり、まっとうな生活を送っている。
ダラー・ビル(腕組んでいる人)
ダラー・ビルの本名は、作中では出ていない。
元はカンザスの花型スポーツ選手だったが、怪我によりプロを断念し、なんやかんやあって銀行のお抱えヒーローとなった。
彼に関してだが、特に何もない。
まっとうな善人であり、良くも悪くもただの好青年だった。
しかし、彼の末路はあまりにも滑稽だった。
死因は、銀行の用意したコスチュームである。
彼のコスチュームには、マントがついていた。
このマントはただの装飾のようなものであり、特に意味のないものだったが、このマントが彼の命を奪った。
銀行強盗を追いかけている最中、マントが回転扉に引っかかり、身動きがとれなくなったところを拳銃で撃たれ、殉職してしまったのだ。
そんな彼の末路は、作中1行で説明され、特に物語に絡むことはなかった。
余談だが、彼はアメコミを全く知らない人からしたらキャプテン・アメリカにそっくりだそうだ。
何回か同じこと聞かれたぞ。
マスクしか見てねーだろ。
シルエット(左端の人)
本名は「ウルスラ・ザント」という。
チャイルドポルノ撲滅のために活動し、ヒーローになった社会派な人だ。
性格的にも特に問題はなかったが、レズビアンだった。
今でこそ同性愛というのは理解が生まれているが、当時は40~50年代だ。
当然色々批判があり、その結果彼女はチームから追放された。
その後、彼女とベッドでいちゃついているところをかつての宿敵に暗殺される。
これも同じく数行で解説されるし、彼女のセリフは作中でも1つくらいしか無かった。
モスマン(鼻かいている人)
本名は「バイロン・ルイス」だ。
良い所の坊っちゃんであり、暇つぶしでヒーロー活動を介している彼は大型拳銃を武器に戦っていたらしいが、作中でそんな描写はない。
そんな彼は、作中ではかなりアホに見える。
このアホ丸出しの面構に加え、ご丁寧に台詞が全部ひらがなという徹底ぶり。
のんきというか、少しアホなんじゃないかと思うくらいの彼の末路は、ある意味誰よりも悲惨なものとなった。
アカ狩りが行われた際、精神を病んでしまい、それが元でアルコール中毒になってしまった彼を待っていたのは、精神病院だった。
その後、年老いた姿で作中に再登場するが、「ヒーローやって末路があれか」と二代目シルクスペクターに言われるほどあれな人物になってしまっていた。
キャプテン・メトロポリス(ナイトオウルの右隣の人)
本名は「ネルソン・ガードナー」だ。
元軍人であり、ミニッツメン結成の発起人であり、次世代ヒーローチーム「クライムバスターズ」の発起人でもある。
そんな彼だが、実はゲイで、チームのとある男性と恋愛関係にあり、映画ではそれを匂わすシーンがほんの数秒ある。
世界がめちゃくちゃになる前に何とかしなければと言っていたが、具体的な案が出ることなく、同じくミニッツメン時代からのヒーロー、コメディアンに会議をめちゃくちゃにされ、何とも悲しそうな顔をしていた。
そんな彼の末路は、事故死だ。
これもやはり数行で紹介されている。
以上で、ミニッツメンの紹介を終わる。
改めて読み直すとろくな末路のメンバーが一人のみという惨憺たる結果だった。
おすすめコミック
ウォッチメンに登場している彼らだが、実はナイトオウル、シルクスペクター、コメディアン以外は回想シーンのみであり、ヒーロー活動をしている姿を見ることは出来ない。
そんな彼らにも、ついに陽の目があたった。
「ビフォア・ウォッチメン」シリーズだ。
これは、ウォッチメンの外伝的なものであり、ミニッツメンエピソードが含まれている巻もある。
しかし、評価はいまいちぱっとしない。
実は僕も一巻しか買っていない。
ウォッチメンが凄くドはまりしたためか、読んでも面白いことは面白いが、なんか違うなあという感想しか出なかった。
そうして、次を買うことに悩んでいるうちに本屋から姿を消し、探すのが困難になってしまった。
たまにまんだらけにいけば見つかることは見つかるが、財布の中が500円しか無かったり、他のアメコミ目当てだったりと、優先順位が低く、結局読まずじまいになってしまった。
というわけで、ビフォア・ウォッチメンについてはなんとも言えない。
しかし、面白いことは面白かったぞ。
だが、個人的にはウォッチメンのほうが何倍も面白かったので、アメコミに興味がある方はまずウォッチメンを読もう。
ウォッチメンのレビューもいずれやる予定だ。
また、映画のOPではミニッツメンの活躍を断片的に見ることが出来るぞ。
色がついても絶妙なダサさとか言うな。なお、ナイトオウルは生足ではなくタイツはいているそうです。それ以上にモッコリが凄く気になるけど。
このOPは、個人的に自分が見た映画の中で一番好きなOPだ。
センスが凄く良い。最高だ。何度も巻き戻して見直すくらい好きだ。
ボブ・ディランの名曲と共に映像が流れるのだが、どこか物悲しく、そしてワクワクさせてくれる。
また、ところどころ史実のパロディがあるのも良い。
広島への原爆投下、終戦時の海兵のキス、人類初の月面着陸、僧侶ティック・クアン・ドック氏の焼身自殺など、様々な当時のアメリカ史に残る有名なニュースがOP中で登場しているぞ。
原作以上にミニッツメンが登場するので、映画も見てみよう。
映画に関しての詳しい話は、また別の機会に。