アメコミを読もう!~アメコミ情報ブログ~

アメコミを読み始めたい、どんなヒーローが居るのか知りたい。そんな人のためのブログにしていきたいと思います

オススメアメコミ紹介番外編第二回:風が吹くとき

漫画、「はだしのゲン」を読み、心に爪あとが残った人は恐らく多いだろう。

小学校や中学校の図書室には、漫画コーナーがあったと思う。

「学校で漫画が読める!やったね!」

と、そんなことを思いながらはだしのゲンを多くの子供は手にする。

最初のうちは家族が戦時中で理不尽な目にあいつつも、家族揃って頑張っていく家族ドラマが展開され、次はどうなるんだろうとグイグイ引きこまれていく。

そこで1巻のラストシーンを見て、あの地獄絵図のページを見ることになる。

ショッキングな光景を目の当たりにしながらも、気になるところで1巻が終わり、父ちゃんや姉ちゃん、弟は助かるのかと次を手に取る。

結局救いなんてなく、憂鬱な気分で3時間目もしくは5時間目を受けなければならない。

こんなトラウマがある人は多いことだろう。

 

今回紹介する作品もだいたいそんな感じだ。

風が吹くときだ。

f:id:minotaki:20150807103808j:plain

凄く仲の良さそうな夫婦と凄く不穏な背景が特徴

厳密に言えば、これはアメコミではない。

イギリスの作家、レイモンド・ブリッグズ氏による漫画であり、絵本のような感覚で読める作品だ。

しかし、絵本のような内容だが、はだしのゲンと同じく、中身は子供が読んだらトラウマ必至な作品だ。

僕もこれ読んで凄く落ち込んだ。

もう読むこともないだろうと思ったら10年以上の時を越え、僕の目の前に100円という超激安価格で姿を表したので、昔を懐かしむつもりで書いた。

丁度8月。平和登校日のあの日を思い出して書こう。

ぶっちゃけ忘れたままのほうが良かったってなったけど。

 

始める前に念の為に前置きをしておこう。

別に僕はこの記事を通して核保有がどーのこーのだの戦争はいけないこと云々なんて書くつもりは毛頭ないし、そんな意図やメッセージが込められた記事ではない。

ただ単に作品紹介をしつつ昔を懐かしんでいるだけだ。

 

あらすじ

時は戦争のまっただ中。

イギリスの片田舎に、ジムとヒルダという、とある老夫婦が住んでいた。

二人は年金暮らしの年寄りであり、慎ましくも穏やかで、そこそこ幸せに暮らしていた。

のんびりとした二人だったが、世界は反比例するかの如くものすごい速さで情勢が悪くなっていき、核が投下される可能性も出てきた。

そのことを重く見た国は、各家庭に核シェルターの作り方などや対処法を書いたパンフレットをおくるのだが、イギリス人得意のジョークか?と思うほど粗末な対処法だった。

それでもジムは疑うこと無くそのマニュアル通りにシェルターを作り、核に備える。

「素人がそんな簡単にシェルター作れるのか?」とこの文面では思うかもしれないが、作れたのだ。

そしてある日、運命の日はやってきた。

「3分後に敵国の核ミサイルがやってくる」とラジオで放送が流れる。三分後て…。

ジムはオーブンをほったらかしに出来ないというヒルダを引っ張り、何とかシェルターに潜り込む。

f:id:minotaki:20150807114133j:plain

そして、核がイギリスに着弾した。

ちなみに、ラスト2コマで二人がやたら狭そうな隙間に入っているのがわかると思う。これがシェルターだ。

資材はクッションと家のドア。

なお、資材はすべてイギリス当局が配布したパンフレットどおりである。

田舎は、一瞬で真っ白になり、廃墟と化した。

運良く生き延びたジム夫妻は、国からの救助や支援を待ち、普段通りの生活を始める。

 

もうあらすじどころか前半部分全て語ってしまったが、これが風が吹くときのストーリーの主なあらすじだ。

 

ちょっとしたネタバレと感想

遠回しに「助からないから諦めろ」といってるようにしか見えない国からのパンフレット。

核にはほぼ役に立たないシェルター。

ミサイル炸裂後すぐに表に出て生活をするジム夫妻。

このことから、はだしのゲン程度でしか核の知識がない人でもわかると思うが、この二人は助からない。

しかし、作中でははだしのゲンのような恐ろしい描写は殆ど無い。

気分が悪くなったり血を吐いたり髪の毛がごっそり抜ける程度であり、人骨や死体が出てくることは作中で一切ない。

ただ淡々と二人の生活が描かれているだけだ。

f:id:minotaki:20150807115637j:plain

エンディングでは、弱り切った二人が眠るところでこの話が終わり、グロ描写はついに出てこなかったが、それが逆に怖い。

いっそ無残な死体が出てきたほうが安心するくらい淡々と、静かに、穏やかに死に向かって物語は進められていく。

もっと取り乱してくれ、恐怖してくれ、自分の置かれている立場を理解してくれ。

そんなやるせない気持ちがゲロを吐くような感じで沸き上がってくる。

しかし、物語は淡々と、この二人が弱っていきながらも他愛無い会話をし続けているところを描写し続ける。

そして、最期まで喧嘩をすること無く、そして仲良く眠りに落ちる。

読み終わったあと、なんとも言えない気分になる。

悲しいような怖いような。

胸に穴が開く気分といえばわかるだろうか。あんな感じだ。

 

面白かったけどもう読みたくない

風を吹くときは面白いけど、もう読みたくない。

そんな作品だ。

今下書きを読み返している最中なのだが、もうこれだけでなんとも言えない気分になるのでもうこの本は恐らく本棚の奥深くに封印する。

売るか捨てるかすればいいじゃんと思うかもしれないが、それはしたくない。

そんな複雑な一冊だ。

なお、この作品はアニメ化もしている。

もちろんハッピーエンドになんかなるはずがないのでご視聴は自己責任で。

 

他にも調べてみると、若りし頃のジムが主役の「ジェントルマン・ジム」という作品もあるらしいが、正直読むと落ち込みそうだから読まない。

兎にも角にも、この記事は書いていると落ち込んでいる時のほうが多かった。

だが作品は面白いというか考えさせられる内容なので、少し憂鬱な気分になりたい人はどうぞ。

 

余談だが、雪だるまが主人公の絵本「スノーマン」の作者も同じレイモンド・ブリッグズ氏であり、こちらは子どもと雪だるまの心あたたまるお話だ。

面白いのでこちらは大人から子供にまで誰にでもおすすめできるぞ。