オススメアメコミ紹介第5回:マーベルズ
漫画やアニメの世界では、よく地球規模の危機が到来する。
異世界からのバケモノや宇宙からの侵略者、それに魔王や、最近のはやりでは神様や天使がラスボスだというのも多いと聞く。
それに立ち向かうのがヒーローたちだが、その間、一般ピープルはどうしているのだろうか。
よくあるパターンとして、パニックに陥り暴動が発生し、一時期都市が無法地帯となるパターンだ。
日本の漫画ならデビルマンとかマーズがなどが当てはまる。
どっちも最終巻は本当に読んでて辛かった。
特にデビルマン最後の見開きは未だに読んでてゾワッとする。面白いけど。
また、人知れず地球の危機になって、人知れず解決するパターンもある。
これは劇場版ドラえもんとかに見られるパターンだ。
雲の王国や海底鬼岩城は大人になっても楽しく見れるぞ。
では、アメコミの場合はどうか。
もちろん人類の危機は何度も訪れる。
ミュータントに粛清されそうになったり、年単位での綿密な計画によってじわじわと侵略の準備がなされていたり、星ごと食べられそうになったりと、スケールも半端ない。
そんな時、ヒーローはともかく、一般ピープルはどうしているか、人々の目にヒーローはどう写っているか。
そんな一般人の目から見た作品が、今回紹介する「マーベルズ」だ。
スパイダーマンが表紙だが出番は凄く少ない。
マーベルズは、1998年頃に邦訳された本だ。
アメコミの需要の少なさからか、当然絶版となりプレミアがついていた。
しかし、2013年に再び刊行されることとなり、現在また絶版状態に陥っている。
例によって漫画専門店もしくはまんだらけなどの中古本屋で探してみよう。
基本的なストーリー
今回はあっさり風味で紹介していくぞ。
時は1939年、激動の時代だ。
若者たちは希望に輝き、野望に燃えており、青年、「フィル・シェルダン」も世界一のカメラマンを目指していた。
若き日のJJJやニック・フューリーも出てくるぞ。
デカい特ダネをつかもうと、ヨーロッパ勤務を希望していたフィルは、ある日のとある発表会で「初代ヒューマントーチ」を見たのを皮切りに、様々な超人たちをニューヨークで目の当たりにすることになる。
結果、行けるはずだったヨーロッパ行きを蹴り、フィルはアメリカに残ることとなる。
それから時が流れ、フィルは一端のカメラマンとなっており、そこそこ名が売れ始めていた。
そしてそれに並行するように、超人の数は飛躍的に増えていた。
アイアンマン、マイティ・ソー、ジャイアントマン、ファンタスティック・フォー等など、他にもまだまだヒーローはたくさん存在し、そのヒーローの数に見合うほどのヴィランや難事件がアメリカに存在していた。
そんな非日常的なことが日常となり、人々はすっかりとヒーローたちに慣れ、半ばショーのように彼らの大捕り物を眺めていた。
ココらへんは「僕のヒーローアカデミア」でも似たようなシーンが有る。ヒーローの活躍は万国共通の娯楽のようだ。
そしてさらに時が流れ、ミュータントの登場や地球規模の危機の到来など、漫画のように退屈しない展開が次々とやってくる。
フィルは有るときは一般市民と同じくミュータントを嫌い、またある時は地球の危機に怯える。
そんな一般人としての風景や心境が、フィルの目を通して紹介されている。
そして、ヒーローの立場というものも時代の流れとともに変わる。
その時、フィルは一体何を考え、何を撮るのだろうか。
というのが大体のストーリーだ。
感想
一般人目線で見るヒーローたちの物語。
これがこの本のテーマだ。
もちろん主人公は一般人であり、ヒーローのようなスーパーパワーも超人ゆえの葛藤も何もない。
よって、そんなヒーローの苦悩なんか知ったこっちゃなく、ただ単にカメラのシャッターを切り、活躍をフィルムに収めるだけだ。
しかし、こんな仕事を何年も続けていく内に、フィルも次第に心境の変化が訪れていく。
最初はミュータンを嫌い、差別こそしていたものの、それはどうなんだと自分に問いかけたり、最初は声援を送っていたヒーローたちに対して否定的になる人たちに対して疑問を持ったりと、考え方が変わっていく。
そんな単なる1カメラマンのフィルのカメラマン人生を、アーチスト「アレックス・ロス」氏の絵で描かれている。
話の面白さはもちろんのこと、この作品はとにかく絵が凄い。
上記の絵を見ればわかると思うが、実に力強く美麗な絵を描く人であり、コレが200ページ超もあるというンだから堪らない。
ちなみに「アレックス・ロス」で検索すると、同氏の描かれた日本のヒーローのイラストが拝めることができるぞ。
「こんなにかっこいいウルトラマンのイラスト始めてみた」ってなったので、ぜひ検索してみよう。
オススメかどうかと言われれば、もちろんオススメ。
しかし、ヒーローのカッコイイアクションや、派手な殴り合いが見たいのであれば、この本はあまりむいてないかもしれない。
ヒーローたちはたしかにカッコイイが、あくまで主人公はフィルだ。
よって、アクションに重点が置かれているわけではないので、フィル自身のド派手なアクションシーンはモニタをぶっ壊すくらいだ。
また、ヒーローの歴史を知るのにも、この本はおすすめだ。
どういった経緯でヒーローたちは登場したのか、どんな事件が過去に起きたのかというのをさり気なくだが描いているので、「あ、過去にこんなことがあったのね」程度にはアメコミの知識を得ることができるぞ。